長年、幾多の食品スーパーを見てきていると、『ここは儲かっていないだろうなぁ!』とか『近い将来危ないだろうなぁ!』とか、と言うのが大体わかるようになりました。何故なら、そういう食品スーパーにはいくつかの共通する『法則性』があるからです。ここでは、その『法則性』の一端をご紹介いたします。ご自分のお店と照らし合わせて、ご覧ください。
冴えない食品スーパーの10の法則性。名付けて!
SM滅亡への10点鐘(テンゴング)
『テンゴング』とは、ボクサーやレスラーの引退セレモニーのひとつとして、行われるものである。
一人の選手がリングに立ち、10の鐘の音が場内に響き渡るのである。
この10個目の金の音を聞くと、この選手は2度とリングに立つことはないのである。

第1鐘 店の廻りの運動会や遠足の日程すら知らない。
 そこのお店の店長室には、大胆にも『目指せ!地域密着スーパー』とか、大書してありました。多分、会社の方針も『地域貢献で生き残りを賭ける!』とか掲げているのでしょう。ところが、実際店長さんをはじめ、ほとんどの従業員の方は、近くの小学校の入学式や運動会の日程すら知らないのです。何をもって、『地域密着』と言っているつもりなのでしょう。このような行事日程を知るだけで、大きく商売の仕方が変わってきます。非常にもったいない話です。
    
第2鐘 お客様が運動会の重箱に何入れるのか?知らない。
 そこのお店では『運動会応援セール』をやっていました。周りの小学校の運動会の日程に合わせて、素晴らしい企画だと思います。ところが、夕方になると、『パセリ』や『ウズラ卵の水煮』、『味付けいなり揚げ』などが品切れていました。これは、店長以下、発注担当者まで、『運動会の重箱』には何を入れていくのか?と言うことがわかっていらっしゃらないことが原因です。運動会の前日には日頃、あまり売れないものでも非常に売れるものがあります。それをリストアップしておかなければ、せっかくの『運動会応援セール』も台無しですよ。
  
第3鐘 毎週、チラシタイトルが変わっても、掲載商品の違いはあまりない。
 最近、どこのSMでも、お客様の生活歳時に合わせて、販促チラシのタイトルをつけられておられますよね。ところが、よく見ると、タイトルは毎週変わっていても、実際に掲載されている商品はほとんど変わっていない!と言うスーパーも良く見受けられます。たとえば、冬の期間だったら、毎週『鍋』。夏だったら、『焼肉』。また、『子供の日、ご馳走特集』も翌週の『母の日のご馳走特集』も『ステーキ』。ひどいのは、『母の日、感謝のジャンボステーキ!』とある大手のチラシに書いてありました。これは、すべてお客様のマーケティングがなされていないことによるものです。もっと、お客様の生活を知らなくっちゃ!
  
第4鐘 同じ商品なのに、エンドと定番についてる価格が違う。
 すごく、基本的なことだけど、定番コーナーと別のところで2箇所陳列していると(特に広告の品)、定番の方にPOPを取り付けるのを忘れる場合が結構見受けられます。つまり、お客様から見ると、陳列場所によって、価格が違うと言うわけです。このような状態が続くと、『定番コーナーは高い!』と認識され、いよいよ定番コーナーへ、お客様は入らなくなります。つまり、店内で一番荒利を稼いでくれるところへ立寄らなくなるわけですから、荒利は低下する一方です。
 あるセミナーでこのことを話したら、ある店長さんが言いました。『先生は知らないのですか?レジを通しますと、どちらも広告の価格で通るんですよ!』って。わかっていないのは、アンタやで。
  
第5鐘 儲からない特売品にはPOPをつけて、儲かる定番商品にはPOPがない。
 どこの食品SMでも、『広告の品』とか『SAIL』『お買い得品』のPOPは良く取り付けられておられます。ところが、私が心配するのは、『儲かる定番』にPOPが全然ついていない店です。『儲からない特売品』にはPOPをつけて、『儲かる定番』には何故、POPを取り付けないのでしょう???
 ここで問題になるのは、安くもない定番商品にどんなPOPをつければいいのか?!と言うことです。安いものを売るのなら、誰にでも出来ます。『定番商品』をそのままの価格で売ることが出来る、これが食品SMに従事するものの『技術』なのです。このHPを通して、ここのテクニックを習得していただきたいのです。
  
第6鐘 来店頻度の高いSMなのに、いつ行っても変化のない売場。
 食品SMにいらっしゃるお客様で、一番構成比の高い『来店頻度』を見ると、『週に2〜3回』と言うお客様です。つまり、2.3日に1回は来店されているわけです。となると、いつ行っても同じ、変化のない売場だと、やはり買上点数は伸びません。変化こそが、次なる購買意欲に結びつくのです。
 ところが、よく見かける商品を山積みした『お買い得品コーナー』。私はこれを『ダンボール・タワー』と呼んでいますが、これこそが、売場に変化を与えない大きな原因となるのです。これをある店長に指摘したところ、『ここのラーメンは先週まで高菜ラーメンでした。今週から博多ラーメンです。』だって。そぎゃんこつ、言われんとわからん!
  
第7鐘 素麺エンドには、乾麺とつゆだけで大陳!
 夏の素麺エンド、冬の鍋エンド。各季節に是非、必要なテーマエンドです。ところが、よく見かけるのが『乾麺』と「つゆ」だけで大陳しているエンドです。私はこれを「博物館」と呼んでいます。つまり、「乾麺とつゆ」のアイテムがたくさん並んでいるのです。これでは、このエンドに立寄ってもお客様は1点のお買い上げにしかなりません。
 よく、お客様の『素麺の食べ方』をリサーチしてみると、お客様は色々なものを『トッピング』や『薬味』に使用されています。これを知った上で、『生活提案』してあげると、買上点数は必ず上がるという訳です。
 
第8鐘 儲かる定番商品は品切れだらけ。また、その件数を数えたことがない。
 ずさんなスーパーほど、『品切れ』も多いですね。定番ゴンドラは品切れだらけなのに、通路にはたくさんのダンボールタワー。こんなスーパーも数多く見受けられますよね。また、こんなスーパーの店長に限って、『うちの品切れは少ない方だと思いますよ!』と、平気な顔でおっしゃる。実際、数を数えたことがないんですね。数えると、必ず100件以上あるというのも、ひとつの法則性ではないでしょうか?!
  
第9鐘 カート利用率が低いのに、店入口一等地に某飲料や米を大陳している。
 この件に関しては、お店が広く、且つショッピングカートの使用率が高いのであれば、私は何も言いません。ところが、ショッピングカートの使用率は低いのに、店の玄関あたりで、『飲料の対陳』や『米コーナー』がある店のことを言っている。確かに、『飲料の大陳』を行えば、何万かのリベートが入ってくる。また、入口で高単価の米を買っていただくと、売上も上がりそうな気がする。しかし、よく考えていただきたい。カートの利用率が低いと言うことは、ほとんどのお客様がセルフカゴと言うことになる。つまり、入口で1.5Lのペットボトルや5Kg、10Kgの米を持ってから店内を歩かなければならないのである。また、その大半が飲料のバンドル販売ときているから、その重さはかなりのものとなる。これでは、店内での買上点数が上がるわけがない。その地域のお客様がみんな、マッチョマンばかりなら良いが・・・。
  
第10鐘 日割特売商品を店内で一番目立つ所に陳列! 
 荒利の低い店に限って、日割の超目商品を店の入口や一番目立つ場所に大陳していることが多い。お客様にとっては大変喜ばしいことであるが、会社にとってはたまったもんじゃない。日割り特売商品の目的は『客数』を上げることである。ところが、こういう店の店長は、この商品で売上を上げよう!と誤解しているのである。
 勘違いしないで欲しいのだが、私は日割特売商品を出すな!とか、隠せ!と言っているわけではない。店の入口や一番目立つところには、お客様の生活歳時に必要で、且つ利益率の高いものを置きなさいという意味である。荒利が下がるのであれば、チラシの売価は下げられないし、会社として存続も難しくなるのですよ。
 
我々は、何の為に仕事しているのか?!
儲けるため!である。
ところが、長年幾多のスーパーを見てきて言えるのは、『儲かる事』に一生懸命、努力・工夫しておられないと言うことである。