次世代の『稼ぐ店長』強室
月刊誌『セルフサービス』2002年8月号
第2話ー【管理者の皆さんおゲンキですか?!編】


 皆さ〜ん♪ こんにちは!久々の先月号はいかがだったのでしょうか?しかも、『難しいマネジメント論を面白く書く』という試みでスタートした今回のこの企画。皆さんの反応を見ないままに第2話を書くというのは結構辛いものがあります〜(~_~;)

今日はワールドカップ3位決定戦がありました。試合内容はもちろん!試合後が素晴らしかったですね。試合に負けて泣き崩れる韓国の選手をいち早く、トルコのキャプテン、ハカン・シュキュルが一人一人抱え挙げ、両国選手一緒になってスタンドのサポーターの声援に応えていました。感動しました!思わず目頭が熱くなりました。『敗者の痛みが分かる』気配りでした。マネジメント論としても、この連載よりよっぽど勉強になるシーンでした。(^^ゞ

さて、先月号では、『部下にやる気が出ないのはマネージャーの責任!』『やる気を引き出すマネジメントのポイントとは?』…を述べてみました。しかし最近、色んな企業さんとお付き合いして感じることは…

部下より、上司の元気のない方が深刻?!

…という企業や職場が結構多いということです。このように不況が進むと、単純な年功序列が成立せず、色んな人が部下になるわけです。例えば…プロパー社員、本体からの出向社員、元大企業出身の中途採用社員、永年勤続のベテランパート社員…こういう方々の存在がマネージャーにとって、『やかましい存在』になっているケースが最近、特に多いようです。具体的に、マネージャーが言葉を借りると…『うちの部下は元気が良すぎて困っているんですよ〜』『現場から意見(文句?)が出過ぎて困る』というように、本社や上司の皆さんがやり込められる場面がしばしばあるんですよね。(~_~;)

下の者ほど、元気にものを言う…これには色々な原因があるようです。もっとも、私が外から見た感触に過ぎませんが…

   私達が稼いでいる!…『プライド』

   私達の方が詳しい!…『商品知識』

   お客様が言ってます!…『マーケティング』

   私だったら!…『高学歴』

   現場の辛さを背負っている!…『現場経験』

   この方が売れるのに!…『販売技術』

確かに、その状況を観ると部下の方が勝っているのです。だから、マネージャーが指示や指摘すると、『文句ばかり言って、全然従ってくれない…もう、諦めています…(T_T)ってなことになっているのです。そこで!私から皆さんへアドバイスしたい事は…

私の仕事はコンサルタント業

私がこの仕事を始めたのは34歳。もう10年近くなります。(お陰でちょっとは名が売れて来ました…九州ではネ!(^^ゞ) 食品スーパーはもちろん、専門店チェーン、食品メーカー、広告代理店、自動車販売会社、ガソリンスタンド、電話・携帯電話関連…など様々な企業様のお手伝いをしております。ご存知の通り、私は某スーパーの出身ですのでどこの企業の指導に行っても、私の場合も先の皆さんと同じように、いや!それ以上に…『プライド』『商品知識』『マーケティング』『高学歴』『現場経験』『販売技術』において、勝ることは無いのです。(~_~;)

更に!他のおエライ先生と違い、私には『元某スーパーの専務』とか『元営業本部長』とか、過去の栄光が全くありません。正直言って私、課長になったこともないもん…(-_-;)

それ以上に、私を悩ませるのが…どこの企業へ指導に行っても、現場の方は『また来たんかい?!』『今度はどこのおエライ先生かなぁ〜?!』って感じで、コンサルタント嫌いが蔓延しているってこと。トップの方と商談でコンサルタント契約がうまく進んでも、諸手を挙げて『よく来てくれました〜♪』と暖かく迎え入れてくれる現場はほとんどなく、逆に!私に『敵対心』をお持ちになっておられるケースが多いんです。

しかし!その企業に入った以上は、私も成果を出さなければなりません。結果が全てのビジネスですから!ね。でも、どんなにトップの方だけとうまくやったのでは成果は上がりません。やはり、業績と言うのは現場が全てを握っているのですから、現場を活性化しないことには…。

私流の『現場活性化の方程式』



これが、私が色んな企業を指導する時の『私なりの現場活性化の方程式』です。つまり、物事の結果は…個の持つ能力、現場の元気、そして物事を解決する方向性の掛け算から生まれるものであり、このそれぞれに働きかければ、必ずや!成果は上がるものと信じています。

1)能力

これは店舗力や商品力、システム、そしてマンパワーを指します。そ!このマンパワーこそが先述の個の持つ『プライド』『商品知識』『マーケティング』『高学歴』『現場経験』『販売技術』…が含まれるのである。従って、これらの能力がゼロという企業や職場は絶対にありえない。現に営業が出来ているのであるから…。ただ、現有能力に満足せずに、レベルアップさせる必要があるが、『あ〜ダメですねぇ〜。ここはこうしなくちゃ〜』と最初からここに手を付けると、現場からの反感は大きいのです。そこで…

2)元気

これは、新しいことへのチャレンジや創意工夫しようとする『やる気』のことを言っています。つまり、現状を打破しようとする意欲と行動そのものですネ!

これついても、元々元気がない企業や職場というのはない。元気が無いのはマネジメントの仕方が悪いから…と、先月号で述べました。更に、コンサル嫌いが蔓延しているわけですから、私が介入することで逆に、現場の元気度はプラスどころか、マイナスになっています。

つまり、コンサルして早期に効果を挙証するには、能力(知識・技術)のアップさせることより、この元気を引き出すことが(一見、遠回りのようだが…)最優先だと、いつも私は考えています。そのためには、現場の方が持っている『お高い先生』という垣根を取っ払い、同じ仕事の同士・パートナーとして認めてもらわなくてはなりません。しかも、私はその企業に毎日通うことはなく、たまにしか顔を出さないのですから、短時間でそれを達成しなければなりません。

だから、私の場合…

(1)     まず、現有能力やその企業の歴史を尊重し、

(2)     マジな講義や指導の中でも、いつも『笑い』ある明るさ、楽しさを大事にしていますが、

(3)     仕事後の懇親会も重要なポイントです。

オフタイムの懇親会では現場の皆さんと同じ立場で、パチンコ、麻雀、釣り、漫才ネタ、野球、サッカー、格闘技、音楽、流行モノ…どんな話題でもなんでもござれ〜です。特にカラオケでは、モノまねオンステージだって…やりすぎ?!(笑)(^^ゞ

たった一夜だけの懇親会で、明くる日からもう同士です。会議するでも、昨日までと全然 雰囲気が違い、明るくドンドン意見も出てきます。『初めてまともに格闘技の話が出来る方と会いました〜』と心を開いてくれたマネージャーさんだって居られるぐらい、共通の話題ってスゴク大事なんですよね。

3)ベクトル

マネージャーの皆さんにとっても、私にとっても一番重要な仕事、それがこのベクトル(正しい方向付け)です。先に述べたように、現場には素晴らしいマンパワー(プライド、商品知識、マーケティング、高学歴、現場経験、販売技術)があるわけですから、コレを活かすも殺すも、その考え方の正しさいかんにかかっているのです。

『失敗は成功の元ではない。失敗は失敗の元である。』これも私のマネジメント持論である。現場の皆さんが一生懸命になって私の方向付けの通りに動いてくれた…ところが、結果が全くでない。失敗である。『貴方の言うとおりにしたら、ダメになってもうた』…では、もう中々信用されませんもんね。

だから、現場の思考を方向付ける…コレは重大、且つ慎重を要するポイントです。先のシリーズでも紹介したように、『変わらぬ原理原則と、変わるべき発想と仕事の仕方』…過去の成功体験にとらわれず、『お客様の満足追求』と『利益追求』と一見相反する目的をちゃんと見据えた上で、時流に合った方向付けしてあげることが大事なんですよね。

最後に…人を動かす最大の力とは

現場を活性化させて成果を上げる…私の仕事もマネージャーの皆さんと全く同じなんです。いや、皆さん以上に辛い立場かも?!だって、私には上司という強制力もないし、何の決裁権限もないのですから。

人を動かすには5つの力があります。

(1)     職位を利用した権力や権限。これで確かに古代のピラミッドは出来上がった。しかし、この力には感動がなければ、自主性も育たない。だから、できる限り使わないマネジメントをしたいものである。(~_~;)

(2)     経験から来る知識や技術。これを部下の支援材料に使えばいいのだが…『ボクが若い頃、それやったんだけどねぇ〜』と部下から出てきた意見やアイデアの潰しや叩く材料に使っているところを良く見かける。(-_-;)

(3)     昔からの習慣や規則、規定。更には罰則。コレも目的実現の為にそぐわなければ変革すればいいのに…『うちの会社ではそれは出来ませんもんね』とアイデア潰しになっているケースが多いから困る。(*_*)

(4)     賞賛、評価、昇給、昇格などの報奨。先月号では『誉める』ことの大事さを述べたが、これも見え透いた賞賛はすぐ見破られし、誤った評価は逆効果となってしまうから注意が必要である。(-_-メ)

ここまでの4つの力を紹介したが…残念ながら、私は立場的にどれも持ち合わせていないのです。あったとしても、(4)の金のかからない『誉め言葉』だけである。これだけでも人は動くが、私が一番大事にしている『組織の最大パワーを引き出す力』とは…

(5)     現場と一緒になって『我々のあるべき姿』を真剣に考え、討論して、共感してできる『共通の価値観である。

これにより、確固たる実行と支援を約束し合うことになるのである。また、これが真の意味での『OJT』であり、最高の教育方法だと思う。

指導先企業で小耳に挟んだいいお話

ある店長がとんでもない失敗を続けた主任を店長室に呼びつけ、史上最大?烈火の如くメチャクチャ叱ったのです。すると、その主任…返す言葉もなく、たまらず半べそで萎縮状態。まぁ、この店長 最初から『今日は許さん!』というつもりだったから、こうなることは承知の上だった。

長時間に渡る叱責が終わり、顔は青ざめ、すっかり肩を落としながら、ひどく落ち込んだ様子で主任は店長室を後にした。すると、この店長すぐさまこの主任の自宅に電話した。

『奥さんですか。私、店長の○●です。いつもお世話になっております。実は今日、ご主人を仕事の件でひどく叱責しました。だから、今夜はすごく落ち込んで帰宅すると思います。そこで、奥さんにお願いがあります。彼が大好きな刺身をレジに用意しておきますので、取りに来てもらいませんか。そして、彼が帰宅したら、満面の笑みで迎え入れてビールとこの刺身を食べさせて、元気付けてやって下さいよ。あくまでも私から電話があったことは内緒で…。』…この奥さん、この電話を聞いている時から、店長の気配りに感動して涙があふれ出たそうです。

夜、主任が帰宅すると、妙に奥さんが明るく迎え入れ、食卓には大好きな中トロとビール。『オレ、会社辞めよかな…』『アンタ、何をバカなことを言いよっとネ!』と店長からの電話のことは一切口に出すことなく、明るく振舞い元気付ける奥さん。

そして、すっかり元気を取り戻した数日後、奥さんの口からこのカラクリが主任に伝えられる。夫婦して感動して、涙したそうである。『オレはこの人について行きたい!この店長の為に、もっと仕事したい!』と。

そろそろお時間となったようです。いかがでしたか?ごめんなさいね。やっぱり、マネジメント論を語ると難くなりますねぇ〜反省。(~_~;) では、今月はこの辺で(^.^)/~~~ 来月からは『計数管理』のお話です〜♪